日本の夏といって思い出すものの一つに、豚の入れ物に入った蚊取り線香がありますね。蚊取り線香の臭いを嗅ぐと、ああ、夏だな…と思うのは日本人の証拠です。
でも、蚊取り線香を入れている入れ物って、どうして豚の形をしているんでしょうか?単に可愛いから?それとも蚊と豚に何か密接な関係がある…?気になります!
一緒に見ていきましょう!
蚊取り線香の入れ物の名前は「蚊遣り豚」
蚊取り線香を入れて使う、陶器でできたあの豚の形の入れ物。何という名前なのか知っていますか?たいてい「ほら、あれあれ、あの豚のやつ」とか「蚊取り線香を入れる陶器製の豚」とかって言っているんではないでしょうか?
あの豚さんは「蚊遣り豚(かやりぶた)」と言います。「蚊取り豚」とも呼ばれますが、本当は「蚊遣り豚」です。
今のような蚊取り線香が無かった時代、蚊を寄せ付けないように使ったのは、杉や松の青葉、よもぎの葉、カヤの木を燃やしていぶした煙でした。これを「蚊遣り火(かやりび)」と呼んでいたんです。
ですので、今の蚊取り線香の豚も「蚊遣り豚(かやりぶた)」という名前なんですね。
ちなみに、「蚊遣火(かやりび)」は、夏の季語として古典の和歌や俳句、また現代の俳句でも使われています。
蚊と豚の関係はなに?
それにしても、なぜ「蚊」を取るのに「豚」なんでしょうか?他の動物でもいいのでは…と思いますよね?
これには諸説あり断定はできません。有名な2つの説をご紹介します。
昔の蚊遣り豚が出土した
東京みある武家屋敷跡から、江戸時代に使われていたという蚊を退治するための入れ物が出てきました。それが豚のような形だったんですね。
当時は、いま使っているような蚊取り線香はなかったので、それにかわる杉の葉や木片などをいぶして蚊の退治に使っていました。そのため、今のサイズよりもかなり大降りのものではあったようですが、形は同じようなものであったということです。
養豚場で使われたものが変化した
もうひとつは、焼き物で有名な、愛知県の常滑市からの説。
常滑市の養豚場で、蚊が発生して困っていたときに、土管のようなものを縦に立てて、中に蚊取り用の草を入れていぶしていました。(常滑は土管の生産でも有名です。)しかし、穴が大きすぎたため、蚊取り線香の煙が早く広く散らばりすぎてしまい、蚊への効果があまり得られませんでした。
そこでもっと効果的な入れ物を…と考え、穴の小さい物を作っていたとき、なんとなく養豚場の豚の顔に似てきました。そこで、形を豚にすることを思いつき、改良していって足までついた今の形に落ち着きました。
焼き物の町、常滑らしく、豚の形の蚊取り線香入れを陶器で作ってみたところ、人気が出て全国に広まったという説です。
蚊遣り豚の使い方は?
なんだか蚊遣り豚をゲットしたくなってきましたね!
現在、蚊遣り豚は三重県四日市市で製造されている「萬古焼(ばんこやき)」がほとんどのシェアを占めています。本格的な物を使いたければ、萬古焼の蚊遣り豚を買いましょう。
あまりこだわっていない場合は、ダイソーなどの100円均一でも扱っていますので、探してみてくださいね。(300円商品の場合あり)充分可愛いですよ。
蚊遣り豚の使い方は簡単です。豚さんの中に、針金が通っていますので、そこに蚊取り線香をひっかけて、つり下げるだけです。もしくは、蚊取り線香に付属している、金属の線香立てにさして、そのまま豚の中に入れても大丈夫です。
どちらも、蚊取り線香が、豚の内側にくっつかないようにおいてくださいね。
使用中は蚊遣り豚本体が熱くなることがありますので、やけどには気をつけて使用しましょう。一度つけたら動かさない方がいいですね。
また、火をつかっていますので、途中で消すときは、ちゃんと消えたか確認してくださいね。
火を使わないタイプなら、こんなのもあります。ブタさん型でいい感じです。わたしも使っていますが可愛いですよ〜!
夏の風物詩 蚊遣り豚
この可愛い蚊遣り豚をアートにしちゃおう!と、毎年「KAYARIBUTART」という企画も登場しています。蚊取り線香でおなじみの「キンチョウ」も協力しているとか。楽しいですね!
最近は電子蚊取りの方が人気があるかもしれませんが、昔ながらの「蚊遣り豚」も、もう一度つかってみるのも素敵ですね。